音楽と住宅デザインの意外な意外性。
- 2018.04.05
- 建築
突然ですが、音楽の話。
音楽には構造があります。
単純な例でいうとロックンロールのスリーコード。
三つの和音を延々繰り返すだけで曲になるという構造。
けっこう単純です。
大きな例でいうと交響曲のソナタ形式。
必ず第一楽章から第四楽章までの「起承転結」の構造になっています。
まるで長編小説や大河ドラマです。
クラシック音楽でいちばん構造を(おそらく最初に)意識して打ち出したのはJ.S.バッハ。
ひとつ「調」をきめてバリエーションをどんどん増やしていく技法ですね。
有名なのは「フーガの技法」や「ゴルトベルク変奏曲」。
僕なんかただただ、きれいだなあ、きもちいいなあと思って聴いているだけなのですが、
その気持ちよさの向こうにはちゃんとした構造が隠されているわけです。
リスナーは意識しないけれど作り手はちゃんと意識しているもの。
普段は隠されている構造ですが、坂本龍一さんがグレングールドのバッハの演奏を聴いた時に
「なんて構造的な弾き方をしているんだろう」と感心したそうです。
そう、グールドはバッハをメロディーに溺れることなく構造的に弾いてみせる。
一見すると乱暴で粗野な演奏に聴こえるかもしれませんが、
いままで聴こえなかった旋律が現れる。
楽譜ではわからない(もしかするとバッハ自身もしらなかった)
音が聴こえてくるかもしれないという構造というものの不思議。
これがなければ面白くありません。
じつは住宅のデザインをしているときにふと感じるのが、この「意図せず」あらわれる美しさだったりします。
線をそろえたり奥行を感じさせたり、その都度工夫をしてデザインを成り立たせているのですが、
あまり「見え見え」になるのは避けたい。
どこかで偶然的な美しさを誘発したいと思う時に必要なのがデザインにおける構造というやつです。
理屈はわからないけどなぜだか気持ちよく感じたり美しいと感じたりする時があります。
それは建築の隠された構造のなせる業なんじゃないだろうかと思う今日この頃。
右手と左手で別々に奏でる旋律から立ち上がってくる隠れた旋律。
そこに意外性という驚きに満ちた美しさがある住宅がつくりだせたら、
きっとすばらしい構造が眠っていることでしょう。
大分の木造住宅
府内町家もご覧ください。
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