美しさの起源
- 2018.07.10
- 建築
先日久しぶりにカモシカ書店に行ってきました。そこで偶然見つけた本がこの本。ヘンリー・スコット・ホランドという人が書いた「さよならのあとで」。ここで内容は触れませんが、本の装丁に一目惚れしてしまいました。ていねいにていねいに作られた装丁。写真を見ていただければわかりますが、表紙は昔ながらの凸版印刷です。すこしざらっとした紙質はワトソン紙のよう。いいでしょうこの凹凸感。かなりの部分を手作業で作っているはずで、おそらく発行部数は少ないはずです。でも、この本をつくった編集者や装丁のデザイナーの作り手のセンスと「この本をこの形で世に出さなくてはならない」という使命感に感激してしまいました。ていねいにつくる、というクリエイターなら当たり前のことをここまでのレベルに高めるって、素晴らしいことだと思います。見習わなければ。
・・・というわけで、宮崎県は高千穂の天岩戸神社に行ってきました。写真は西本宮の門にあたる部分。緑の木々に囲まれた美しい直線の屋根は、私たちがすばらしい建築に触れたときに思う「原風景」です。日本という温帯モンスーン(造語!)の建築のある風景はきっとこの形が理想なのですよ。軒が深く開口部が広い。その向こうの風景はレイヤのような多層構造です。緑なす木々が影をつくり、地面の石畳は誘導線としてパースペクティブを強調しています。神社のレイヤ構造は「その向こうにあるなにかの気配を感じさせる」宇宙観です。
上記ふたつの造形に共通しているもの。わかりますか?
立体感と空間感です。
凸版印刷の凹凸は印刷物というカテゴリーを超えて、紙の手触りや質感が気持ちよい。神社の多層レイヤは建築単体ではなく、いくつもの要素(屋根、緑の木々、石畳、奥之院・・・・)を奥行きをもって配置することにより、そこにひとつの小宇宙をつくっている。
私たちの時代はできるだけ手間を省き、単調な答えで済まそうとします。シンプルはグローバリズムの美点の一つではありますが欠点でもあります。「深さ」や「感触」を忘れてしまっては滋味を味わう機会が失われているのではないでしょうか。
大分で新築を建てるなら
府内町家もご覧ください。
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