映画からみる住宅・暮らし方
- 2019.08.12
- 建築
最近、僕の書くコラムは映画ネタが多くて、無理やり住宅とか木造とかに話を結び付けている感があるみたい。まあ、それはそれであれなんですけど、そもそも建築というものは独立して成立するものではなく、かならず人の暮らしとか家族の歴史とかがあっての装置、あるいは器みたいなものと捉えている。だから人の立ち振る舞いや、暮らしたり生きたりすることと、建築は絶対無縁ではないはずなので、今日もそんな映画の話から入ります。
ハリウッド映画よりもヨーロッパ系の映画が好きで、「ニュー・シネマ・パラダイス」や「アメリ」、ヴィム・ベンダースやイタリアやフランスものをよく観る。 で、先日なんの予備知識もなくフランス映画の「愛、アムール」という映画を観てしまった。どうして「観てしまった」と書いたかというと、「愛、アムール」というロマンチックな題名とは裏腹にかなりショッキングな内容だったから。老いと麻痺と介護と別れ。なかなか直視するのも難しいシーンが多かったんだけど、最後にハネケ監督はほんのちょっとした奇跡を用意してくれた。万人におすすめではないけれど、かなり観客が試される映画です。 で、僕が今日強調したいのは「重いテーマ」の方ではなくて、主人公の老夫婦が住んでいるアパルトメントでの暮らし方。 ご夫婦はそれぞれ指揮者とピアニストという間柄で、俗にいうところの芸術家夫婦。すでに現役から引退しているので、居間の椅子に座って教え子のCDなんか聴いている。 アパルトメントだから小さなキッチンに小さなダイニングテーブル。料理をつくったら、そのままテーブルで朝食を食べる。フランス人は食事が贅沢なんて思うのはテレビの妄想。自宅の食事はとっても簡単に質素に済ませてる。居間は隣の部屋。 食事は義務のように食べて、居間に移ってからがくつろぐ時間。夫は必ず専用の一人掛けのソファに座る。相手が奥さんでも、客人でも、娘でも。(ここはきっと大事なシチュエーションなんだけど解説は割愛) ちょっと古いステレオ装置とスタンドと一人掛けソファ、その組み合わせが実にいい。人生において何が必要で、何が必要でないかがよくわかっていらっしゃる人のインテリア。
映画をとおしてこんな人の暮らし方を眺めていると、われわれ日本人のLDKという使い方は「なんだかなあ」と思ってしまう。テレビを中心に置いてしまうから、上記のような「食べる」ことと「くつろぐこと」がごちゃまぜになってしまっているし、知らず知らずのうちに、テレビに子育てを任せてしまっているのではないか。
暮らしを豊かにする第一歩は、お気に入りのソファを手に入れることなんじゃないかと思う。 写真は先日行った大川の展示会での写真。カタチがレトロでとてもいい。ミッドセンチュリーのデザインはこの家具屋さんの祖父のデザインをそのまま使っているからとのこと。本物です。たとえ実物でなくても、時を経たデザインはしっくりくる。何十年も座るんだという視点で選ぶことが大切なんだ。
佐藤 隆幸
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