家型という形 ~前編~
- 2019.12.10
- 建築
長くものを作り続けていると、形がだんだん単純化していることに気が付く。若いころはなんとかして面白くしようと、高さを変えたり部品を付けたり、囲ったり飛び出したり・・・。なんというか形態の冒険に心血を注いでいた。
だから勢いがあり無条件に楽しい家ができた。理屈がなかったから(いや、ちゃんと理屈はありましたよ)楽しさというかワクワク感が理屈を凌駕していた。あの頃にしかできない貴重な建築だった。
それでも、歳を重ね経験も積んでくると、だんだん自分の法則に縛られるようになる。いや、そうじゃなくて自由になるんだ。
ここを説明するのが難しい。
少しの「線」で表現できるようになる、という言い方がいちばんしっくりくる。そんなこと言ってもお前はまだ無駄な線が多いじゃないか、といわれれば返す言葉がないけど、(あくまで)そんな傾向があると思っている。
さて僕がここで言いたいのは、複雑が悪くて単純が良い、ということではもちろんない。
モノづくりをする人間にはかならず変遷というものがある。これは経験則だけの話でないから、単に年齢を経たほうがいいものができるというわけでなく、その時・その時代にしかできない表現というものがあって、できるだけ「あなたのその時代」に素直に従った方がいいと思っている。
最初からミニマム(単純)を目指したものは面白みに欠けるというわけ。ピカソは、青の時代があってキュービズムがあるように誰でも最初から答えを持っているわけではないのだ。
もしAiが登場しいろんな与条件をインプットするだけで、フランク・ロイド・ライト風とか安藤忠雄風な木造住宅ができあがるとしたら、それはワクワクする表現なのだろうか。新手の予定調和ではないだろうかという危惧が湧く。
これは想像だけど、短期間で習得したものは短期間で消滅するという、みなさんご存じのSF小説「アルジャーノンに花束を」にでてくるアルジャーノン・ゴードン効果というやつだ。チャーリイは天才から「最初の状態」に戻るのに時間はかからなかった。後々後世まで残る意匠というのはAiにはできそうもない気がする。
ものの見事に話はそれたけど、木造住宅の「家型」については~後編~で詳しく論じることにします。今回はカタチのデザインについての前口上でした。
佐藤 隆幸
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