景色と光を取り込む開放感 自由に描く住まいづくり
通りから眺めると、グレーと白の2つの住まいが前後に並んで建つように見えるK邸。屋根のついた門柱を潜れば、横に広がったひとつながりの住まいが現れるという意外さに、思わず感嘆の声が上がります。
「本当は家を建てるつもりはなくて、定年退職になってから構えればいいかなと思っていたんです」と笑顔で迎えてくださったのはご主人。それでも30代の頃は住宅展示場を巡り、我が家を建てる計画はあったのだそう。
結局、納得できる家が見つからないまま、実現には至りませんでした。「それが、ふと府内町家のモデルハウスに立ち寄ったときに、この家だ!ってひと目ぼれして。外観と室内に入ったときのイメージがあんまりにも違って、びっくりしたんです」と目を輝かせる奥様に強い衝撃を与えたのは、府内町家の特長のひとつである三和土の玄関。
正面には光と景色を取り込むデッキがつながり、大きな窓からは明るい開放感が広がっています。「玄関といえば靴箱があって狭くて。でも家ってこんなに自由なんだって、いままでの家づくりとはガラリと考え方が変わりました」。
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県産の無垢杉と湯布珪藻土が包み込むLDK。湿気のない空気感が印象的。
縦長の敷地を有効に活用 ゆとりの時間を楽しむ住まい
府内町家のモデルハウスをお手本にしたというK邸。社会人になる息子さんがいらっしゃり、将来ご家族が増えたときにも2世帯住宅として対応できるよう配慮されています。そして家づくりのコンセプトになったのは、南北に伸びる縦長の敷地を有効に使った“ひょろ長い町家”。玄関を中心に、道路に面した南側と長い廊下を挟んで北側に配置した2つの空間で構成され、移動距離を持たせることで様々なシーンを使い分ける空間づくりがされています。
まずは生活の中心となる北側のリビング・ダイニングへ。目を見張るのは、長さ5m以上もある煙突がリビングの吹き抜けに添って伸びる薪ストーブの存在感です。「薪ストーブのやわらかい暖かさは、ほかにないほど特別。炎を見ているだけでも癒されますよね」とお気に入りの奥様。さらに「ここが薪ストーブにあたる特等席」とご主人が教えてくださったのは、腰掛けるのにちょうどいい高さの畳コーナー。畳の床を持ち上げれば収納庫としても利用できるアイデアが生かされています。
2階は吹き抜けを囲むように息子さんの個室と客室を配置。国東半島でしか生産されない貴重な七島藺の畳を敷いた客室は、お客様をおもてなしする贅沢な空間を作り出しています。また南側に向かって廊下を進むと、ご夫婦の寝室へ。北側と離すことで、プライベートな空間を分けています。「50代からの家づくりは、子育てをしていた30代とは違う“将来”が見えてくる。気持ちにもゆとりがあるからこそ、自分たちの時間を楽しむ家づくりができたんじゃないかなと思います」というご主人の言葉が印象的なK邸でした。
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アジアンテイストを意識した寝室。
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壁を開き吹き抜けとつながる客室。